藤井健仁 彫刻総覧 弐 彫刻鉄面皮 + NEW PERSONIFCATION

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City_net Asia 2007 (ソウル市立美術館)
カタログ記載 作家ステイトメント

 鉄で人形を.......

  藤井 健仁

 乱暴な言い方をすれば、鉄を素材として用いて物品の制作を試みる際、鉄がヒトの歴史と生活環境に対して現在今ある状態となるよう働きかけてきたものと同じものが、その制作する個人の意識にも働きかける。そして人形と云う物 を制作しようとする場合、自ずとそのルーツである呪物、神像等が機能し得た過去へと制作者の意識は、部分的にではあるかもしれないが、遡る。 「鉄の時代」の台頭と入れ替りに後退していったのが、「人形」が共同体の中で機能し得た世界であるから、この制作はヒトの歴史の正方向と逆方向、双方のベクトルに引き裂かれており、なおかつそれを構成する素材とモチーフである「鉄」と「人形」という、お互いにとってそれぞれの背後にある言語イメージからはかけ離れた対極的な要素を持つ、マッチョな鍛造労働に拠るやわらかな内向的愛玩物の製造作業でもある。だがその奇怪な条件下で制作された「鉄の人形」が、「鉄」+「人形」という要素の組み合わせの呈示を超え、ある質を持った存在として自立出来るのであれば、それはまぎれもなくシュルレアリズムに於ける転置、しかも現実空間の中で物質によって実現されるデペイズマンとも云えるものなのだ。

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