藤井健仁 彫刻総覧 弐 彫刻鉄面皮 + NEW PERSONIFCATION

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ようこそ/『ぶったたいて作る「鉄面皮」』  西田健作

 鉄で作られた17個の肖像が、さらし首のように台上に並んでいる。モデルとなったのは麻原彰晃被告 にブッシュ大統領、ビンラディン容疑者、小泉首相ら。この「彫刻刑 鉄面皮 プラス」で、第8回岡本太郎記念現代芸術大賞の準大賞に選ばれた。大賞は過去に一度も該当がないので最も上位の入選者だ。いま、川崎市岡本太郎美術館で、入選作品を集めた展覧会が開かれている(4月10日まで)。 彫刻刑と名付けたが「断罪するつもりはない」と話す。むしろ対象に徹底して寄り添うことで作品は生まれる。まず一枚の写真を穴が開くほど見つめ、デッサンを描く。次に切り抜いた鉄板を、バーナーであぶりながらハンマーでたたいていく。「一つにおよそ一週間かかる。自分の顔が似てきたり、一瞬、生身の顔をたたいて人を殺しているような感覚になることもある」。酸化した鉄のにおいは、血のにおいにも通じるという。愛知県生まれ。岐阜との県境近くにアトリエを構え、加工しにくい鉄にこだわる。「暴力衝動じゃないけれど、石膏や木では力が強すぎて制作中に壊してしまう。労働を吸い取ってくれる鉄で、ようやく作品が残るようになった。」鉄は近現代の世界を形作る素材でもある。武器や道具、乗り物を生み出し建築物をも支える。「カリスマたちの顔はすごいテクニックで仕上げているわけでもなく、ただぶったたいたのが表面になるだけ。でも、戦争、権力、お金など鉄が生み出したものとかかわりが深い人ほど不思議と相性がいい」「まあ、そんなコンセプトより、似ている、似ていないで出来を判断してもらっていいんです。アイドルの彫刻なんて、子どもたちに『似てねえーっ』って思いっきり言われたけど」

朝日新聞 2005年 3/2夕刊

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